サウジアラビアでのキャッシュレス社会の実現

サウジアラビア王国は、金融テクノロジーの発展によって、社会のデジタル化を進めています。

2021 年 05 月 , by Alexandra Santiago

サウジアラビア王国は、2016年に「ビジョン2030」を発表しました。これは、石油生産に依存した経済から、テクノロジーを基盤とした活力ある社会への移行を目指す野心的な計画です。この経済改革計画には政府と国民が達成すべき様々なマイルストーンが含まれており、その一つとして、2030年までに取引の70%をキャッシュレス化することが設定されています。

 

この目標を実現するために、国は金融部門開発プログラム(FSDP)などのプログラムを策定し、キャッシュレス経済を推進する3つの重要な柱である「デジタルリテラシーの向上」、「インターネットと決済インフラの開発」、「フィンテック・イノベーション・エコシステムの発展」に注力しています。

 

デジタルリテラシーの向上

サウジアラビア王国の人口は3,476万人で、2009年には30歳以下の人口が全体の70%を占めていました。若年人口が多いことから、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、若者は「未来の設計者」であると述べ、国の財産として称えています。

 

サウジアラビアの国民は、若いだけでなく、デジタル技術にも精通しています。都市化が1975年の58%から2018年には83.8%まで進んだことで、技術の進歩に敏感なだけでなく、その技術を日常生活へ浸透させようとする、グローバル志向なデジタルネイティブ世代が生まれています。

 

デジタル化された決済インフラの開発

サウジアラビアは、デジタルトランスフォーメーションが経済を加速させると考え、キャッシュレス社会の実現に向けて、ヘルスケア、銀行、電子政府サービスなどの分野でデジタル化プログラムを開始しました。これらのデジタルサービスをより多くの人々が利用できるようにすることで、デジタル化をリードし、より良いインフラの開発を目指しています。キャッシュレス化を進めるために、下記のような様々な取り組みが行われています。

·       2016年、デジタル取引を促進するために、非接触型の決済サービス「Mada Atheer」が導入されました。

·       2018年、伝統的な銀行とフィンテックプレーヤーの両方に対応できる安全な国家決済インフラを開発するために、Saudi Payments Companyが設立されました。

·       政府は、非接触カードとデジタルウォレットの両方を利用できるPOSマシンの導入数を、2019年の397,000台から、2023年までに648,000台に増やすという目標を掲げています。

·       従来の銀行も、ビジョン2030に合わせて、モバイルバンクアプリケーション、ブロックチェーン、クイックペイオプションを導入しています。

 

フィンテック・イノベーション・エコシステムの発展

サウジアラビアは、デジタルトランスフォーメーションをさらに推進するために、デジタル決済に加えて、フィンテックイノベーションを推進したいと考えています。2018年、フィンテック産業の発展を支援し、国内で新たにフィンテック企業を設立する際に発生する問題に対処するため、金融部門開発プログラムを通じてFintech Saudiが創設されました。Fintech Saudiは、フィンテックのイノベーションを発展させるために、以下の3つの大きな役割を担っています。

·       フィンテック業界のプレーヤーが必要とするインフラの整備を支援すること

·       フィンテック産業の成長に必要なスキルと知識を構築すること

·       フィンテック起業家を開発の各段階で支援すること

 

フィンテック産業の発展とデジタル技術の導入が進んでいる同国の状況は、新たなフィンテックプレーヤーにとって、様々なニーズに応じて革新的で最先端のソリューションを生み出す絶好の機会となっています。サウジアラビア特有のニーズや、同国の積極的なデジタルトランスフォーメーションの詳細については、当社のレポート「2030年までのキャッシュレス化に向けたサウジアラビアの取り組み」をダウンロードしてご覧ください。

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