医療費が中国政府の予算にとって大きな負担に

中国の公的医療制度は一元化されており、特に大規模な公立の三級病院は過度の利用に苦しんでいます。

2018 年 01 月 , by

中国が抱える医療環境の影響と、医療費に対する政府の支出額が増加する可能性を考慮すると、政府支出全体における医療費の割合は、今後さらに大きくなる可能性が高いといえます。今後のGDP成長率、政府予算の成長率、中国の医療制度の現在の財務構造に基づき、弊社のレポート「中国の医療改革:生き残るのは誰なのか?」では、2045年までに、中国政府予算の20%は医療費にかけられることが予測されていますが、これは世界中で最も高い数値の1つとみられています。しかし、中国の医療は現在財務面において政府予算が占める割合は56%にとどまり、これはEU(77%)、日本(84%)などのほとんどの国よりもはるかに低い状況にあります。

コスト削減のための公立病院改革

2015年以来、中国政府は、医療システムの質、適用範囲、持続可能性の向上を目指して、医療改革を実施してきました。中国の公的医療制度は一元化されており、特に大規模な公立の三級病院は過度の利用に苦しんでいます。政府はまた、一般開業医や民間医療施設の普及を促すとともに、公立病院の階層的なシステムを開発することで、よりコスト効率の高い分散型医療の実現を目指しています。

それに加えて、政府は、医薬品販売と病院収入を分離し、医療サービスの価格調整に焦点を当てた、包括的な公立病院を導入しました。この改革は、医療支出の増大を抑えながら、公立病院の医薬品販売への依存を減らすことを目的としています。全ての公立病院で医薬品販売(伝統的な漢方薬を除く)時の15%の利益が取り除かれ、国のガイドラインに基づき、医薬品販売の利益に対する公立病院の依存度が低下することとなりました。

広範囲に及ぶ改革に加えて、中国政府は、医薬品製造の物流、病院組織、社会保険の分野を適切に調整することを目的とした財政改革も実施しました。

2018年に国家医療保障局(NHSA)が設立されたのも、この改革の成果の一つでした。NHSAは、全ての社会保険制度に対する管理責任を負うだけでなく、価格設定、プロバイダーへの支払い、調達など、以前は分離されていた購買機能が統合されています。政府が病院の医療サービスへの過度の依存から脱却する緊急性を認識しているため、この改革は、病院とプライマリ・ケア施設の両方を対象とした、多層的なリファラルシステムを開発する体系的な取り組みとも関係しています。

民間医療サービスの推進

2017年には、国務院弁公庁も、民間投資家の中国医療サービス部門への参加を奨励するために、「多様な民間医療サービスの発展を奨励する意見書」を発表しました。この政策は、国内の医療部門を発展させることも目的としていました。該当する民間医療施設は公的施設と同等に扱われ、患者の紹介、業績評価、料金や支払い、インセンティブなど、いくつかの分野で同じ恩恵を得ることなどが内容として挙げられています。

政府はさらに、高度な医療技術、業界最高のオペレーションモデル、豊富な経営経験を備える外国人投資家に対し、合弁事業を通じて医療機関を設立することも奨励しています。このコラボレーションは、外国人投資家に対して、国内ですでに承認されている治療法に加えて、規制対象となっている治療方法の導入を促します。リハビリテーション、介護、病理学的診断、医療画像、健康診断、消毒、ホスピスケア、血液浄化など、専門的なサービスを提供できる機関は、特に政策的な優遇を受けることになります。

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