デジタル化はアパレル業界の生産工程をどのように変えるか

概要: デジタル化は、消費者の需要の高まりや人件費の高騰といったアパレル業界特有のニーズに対する最適なソリューションであることが実証されつつあります。

2021 年 04 月 , by Alexandra Santiago

アパレル業界は、世界で最も急速に成長している産業の一つです。世界のアパレル製造市場は2020年時点で9,482億米ドルの規模となっており、2021年末には9,920億米ドルまで成長すると予測されています。なお、この市場の半分以上はアジア太平洋地域が占めています。

この業界では、メーカーが変化を取り入れることに消極的であるため、特にデジタル分野での革新が遅れています。しかし、次々と新しいファッショントレンドを求める消費者ニーズの高まりと、それに対応するための人件費の高騰などを受け、変化を受け入れ積極的にデジタルソリューションを模索する企業も出現してきています。

YCP SolidianceBrother Machinery (Asia) Limitedの共同レポートアパレル業界におけるデジタルトランスフォーメーション:アパレル工場のサプライチェーンにおける効率化の方法」では、デジタル化は、コストの削減だけでなく、アパレル業界の全体像、特にサプライチェーンの生産段階に革新をもたらす理想的なソリューションであるとしています。

より良い生産を目指して

2020年、新型コロナウイルス対策のための規制を受けて、アパレル企業もデジタル処理への移行を進め、生産効率の向上に焦点を当てて全体的な事業目標の再設定を行い始めています。このデジタル化戦略は、自動化によってバリューチェーンの3つの工程――前工程、生産工程、後工程――で人的資源を補い、効率化を進め、さらには製品の品質向上を後押しすることで、業界の長期的な未来を変えることを目指すものです。

特に製品コストと労働の大部分を占める生産工程は、革新的なデジタル化の可能性を秘めています。この工程では、生産段階で各企業がそれぞれ固有の問題を抱えており、その特定の要件に合わせた新しいハードウェアを作成する必要があるため、デジタル化という意味では特に魅力的なビジネス機会が存在しています。

パターンと裁断

生産段階の最初の工程は、非常に時間がかかる繊細な工程となっています。中でも特に手間のかかるパターンマッチングのステップでは、工程を高速化し、正確性を高めるソリューションを見つけることが課題となります。

独創的な例としては、ドイツのKuris Spezialmaschinen社が開発した自動裁断機は、より多くの裁断装置とクロスバーを備えており、一斉裁断の機能によって裁断時間を40%短縮することができます。この機械により、全体の生産性が向上し、より多くの製品を短時間で生産することが可能になりました。 

縫製

製造コスト全体の3540%を占める縫製分野では、生産ラインの一元化を目指して、より良いソリューションの構築が求められています。

Brother Machinery Asiaが開発したNEXIOシステムは、一つの工場ラインからサンプルデータを収集し、工場全体の生産性に対してレポートを作成することができるという点で、効果的なデジタルイノベーションの好例となっています。このシステムを導入したベトナムのMay Hai Garment Joint Stock Companyでは、生産性が5%向上し、34時間かかっていた検査報告が数分で済むようになるなど、生産ラインに驚異的な変化があったといいます。NEXIOシステムによって、7,680時間かかっていた生産時間を960時間にまで短縮し、さらに報告されたデータを他の関係者と共有することで、完全な透明性を担保することも可能になっています。

未来を変える

デジタル技術をサプライチェーンに導入することは、新型コロナウイルスのパンデミックという試練の中でも、アジアのアパレル企業がパフォーマンスとコストを最適化するための革新的かつ効果的な方法であることが証明されています。業界全体がサプライチェーンの各工程にデジタル技術を導入する方向に進んでおり、ファッションブランドの約75%が、サプライチェーンの柔軟性を高めるために、AIを導入したデジタル主導のソリューションの採用を検討しています。 

アパレル業界のデジタルトランスフォーメーションにおけるその他のイノベーションや、このアプローチをお客様やお客様のビジネスに最適に活用するための当社提案については、こちらからレポート全文をダウンロードしてご覧ください。

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