前例にないレベルのASEANの医療費支出の問題に対処する

世界平均と比較して、ASEAN主要6カ国が公衆衛生に割り当てる予算は少ない状況です。

2018 年 10 月 , by

東南アジアを経済面でリードする国々で構成されるASEAN主要6カ国は、世界中の様々な国と同様に、医療費が前例にないほどに高騰した結果、公衆衛生予算の拡大が問題となっています。現在の成長率が続くと、これらの6カ国は、今日の医療費と比較すると、2025年までに医療費が約2倍となり、約3200億米ドルの増加が見込まれています。

私たちのレポート「ASEANが抱える3200億米ドルの医療費問題」は、ASEAN主要6カ国の支出を中心とした医療費の急増は、国家間の急速な人口動態の変化によるものであることを示唆しています。東南アジアの人口の約21.1%は、出生率の低下と平均寿命の延伸により、2025年に60歳以上となります。生産人口でみられる高い喫煙率と肥満率も、医療費の増加において大きな要因となっており、これに該当する人々が不健康な高齢人口へと変わるものとみられています。

世界平均と比較して、ASEAN主要6カ国における全体的な医療費の比率は、比較的低いレベルにあります。それにもかかわらず、ASEAN主要6カ国の政府は、国家予算において医療費に高い比率を割り当てる可能性は低いとみられます。南シナ海における貿易戦争や緊張の高まりを背景として、これらの国々は大規模なインフラ計画や経済刺激策などの重要な分野に予算を割り当てる傾向にあることが理由として挙げられます。

ASEAN主要6カ国が、医療費負担の効率性の面で、先進的な国となるのに遅すぎることはありません。医療の費用対効果曲線を参照すると、シンガポールを除くASEAN 6カ国は、「中間レベル」にあり、過剰に支出を行っている国と比較して医療費の支出額は少なく、開発途上国としては、平均寿命は長くなっています。これらの国々は、平均寿命を延ばすためにより多くの予算を費やすことで、世界の医療先進国に肩を並べる可能性があるため、費用効率の高い医療システムを構築するのに理想的な立場にあるといえます。

しかし、これらの国々の政策立案者は、平均寿命以外の部分にも注意を払う必要があります。近年の医療の改善により、ASEAN主要6カ国における損失生存年数が短縮されていますが、同時に障害生存年数が増加しているために、医療費の支出が増加しています。

急増する課題の克服

課題が急増しているASEAN主要6カ国ですが、レポート「ASEANが抱える3200億米ドルの医療費問題」で言及されている戦略を遂行することで、より優れた医療システムを構築し、医療費の問題を軽減させることも可能となります。私たちのレポートでは、政策立案者が検討すべき3つ手段を推奨しています。政策立案者は、タバコやアルコール、砂糖や塩など、健康に悪影響を及ぼすが現在は全く課税されていない製品に課税することで、新しい医療費の資金源を生み出すことが可能となります。医療費を合理化し、行政上のボトルネックの削減に寄与する政策として、例えば医薬品承認プロセスの過剰な見直しを削減することも実行可能な手段であるといえます。

企業もまた、政策立案者の課題克服を支援することで、貴重な機会を捉えることが可能となります。民間病院、医薬品、医療機器メーカーなどのヘルスケア業界のプレーヤーは、効果的な医療製品とサービスを提供することで、政策立案者と提携すること期待できます。高齢者向け施設や介護施設など、他の医療サービスにも機会が存在します。人々の間でテクノロジーが広く浸透し、デジタルヘルスケアが導入されることになれば、医療問題を対処する有効なアプローチになると考えられます。

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