日本のプライベート・エクイティ部門に 

対する肯定的な見通し

最近の世界経済の低迷にもかかわらず、日本のプライベート・エクイティ(PE)分野は、将来有望な存在として肯定的に受け止められています。

2019 年 12 月 , by YCP Solidiance

最近の世界経済の低迷にもかかわらず、日本のプライベート・エクイティ(PE)分野は、将来有望な存在として肯定的に受け止められています。世界的なプライベート・エクイティ投資家が、過去数年間で新規案件のペースを低下させていることから、資金調達に減速がみられます。

しかし、日本では近年、ベンチャーキャピタル(VC)分野とともに、PEが好調に推移しています。この分野は成長を続け、国内外からの投資も増加すると見込まれています。

最近では、2019年第1四半期に日本を拠点とするプライベート・エクイティ約13社が、総額2210億円を調達しており、これは2018年第1四半期の約4倍の金額となっています。こうした現時点での兆候から、日本市場で資金調達の新記録が先行して達成される可能性があることを示しています。

プライベート・エクイティ・インターナショナルの以前のデータによると、日本市場に注力するPEファンドが2016年の15倍以上の資金を調達したことも記録されています。このデータによると、NSSK(5億3200万米ドルを調達)、アドバンテッジパートナーズ(同600億円)、J-STAR(同2億7000万米ドル)など、日本を拠点とするファンドの100%が、この期間に目標を達成するか、上回る結果を示しました。国内PEディール額も、前年比で大幅に増加しました。

さらに、同じ期間に日本では30%以上多くのディールがクローズされ、大幅な増加を示しています。日本のスタートアップも、2012年の4.5倍となる約25億米ドルを調達しました。一方、日本のコーポレート・ベンチャーキャピタルは、2011年の投資水準の60倍近くの709億円を記録しました。

国外においては、2017年に日本の経営者によるアウトバウンドPE投資は大きく拡大しており、取引件数は約28%、取引額は46%増加しています。

ディールに対する障壁を減らす

従来の株主間の取り決めが大幅に排除されているだけでなく、スクイーズアウトや非課税スピンオフ制度の導入や改善に伴い、日本におけるディールの障壁は徐々に取り除かれています。

金融庁が制定したスチュワードシップ・コードの2017年改正で記載された、機関投資家が自主的に採択した一連の原則においては、中長期的な企業価値の向上と機関投資家とのエンゲージメントの強化の必要性が明確に挙げられており、非コア資産の売却が積極的に奨励しされています。政府はまた、コーポレート・ガバナンスと株主還元を強化することを通じて、外国投資家に対する開放的な姿勢をますます進めています。

それに加えて、PEに対する認識の変化は、国内の堅調な資金調達を支える原動力となっています。PEはかつて、財政的に苦しんでいるビジネスに飛び込み、ただ利益を追求するために会社をひっくり返す存在であると捉えられていました。しかし、PEファンドは企業の生産性を向上させ、日本企業の事業継承を促進するために役立っているため、業界においてこの認識は変わりつつあります。

依然として課題を抱えるディールと市場

外国人PEバイヤーにとって日本の環境は大幅に改善しており、日本のコングロマリットは非コア資産の売却を奨励されていますが、重要かつターゲット企業特有の課題が残っていることを認識する必要があります。

ディールの対象となる企業は、単に切り出す必要がある、売り手の一部門であることが多いといえます。ターゲット企業が子会社であったとしても、親会社は多くの場合、主要資産を保持しています。

主要な資産という枠を超えて、通常は売り手と企業の間には実質的な依存関係があり、そうした企業を切り離す際には注意が必要です。多くの日本のコングロマリットは、事業体や一体資産の売却を容易に進められるようには構成されておらず、ディールチームは大きな困難に直面します。

販売される事業が上場子会社であっても、同様の依存関係が存在することがあります。ターゲット企業の取締役会は、社外取締役を含む特別委員会を設置し、経済貿易省の「公正なM&Aの在り方に関する指針」の順守を試みる可能性が高いといえます。これは、バイアウトを承認する場合に、独自の価格やその他の要件を課すことによって、独立性を主張しようとすることも考えられます。

さらに、政府や市場が開放的な姿勢を示しているにもかかわらず、一部の業界に関しては、国外の買い手にとって依然として障害が存在します。例えば、輸送、通信、エネルギー、放送、ソフトウェアなど、いくつかの分野における買収については、政府が実質的に関与することになります。

日本企業を対象としたクロスボーダーのM&A取引で、従来から発生してきた文化的問題も、プライベート・エクイティの買い手にとっては課題であるといえます。企業は、買収企業にとっては対応が難しい変則的な要求に備える必要があります。

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