コロナ禍のフィリピン物流業界におけるデジタル化のメリット

フィリピンでは、新型コロナウイルス関連の規制が徐々に緩和されていく中で、物流の課題に対処する必要があり、中でもデジタルトランスフォーメーションの推進が最重要課題となっています。

2021 年 06 月 , by Alexandra Santiago

フィリピンの経済がコロナ禍におけるコミュニティ隔離措置から徐々に回復するにつれて、衣料品や家具の業界を中心に、輸出業者や荷主から、国内の物流業界を悩ませている交通渋滞や海上輸送の問題への対処を政府に求める声が高まっています。20216月のYahoo Newsの記事によると、業界関係者からは、輸送費の高騰や許可証等の書類発行の遅れが出荷の効率化を妨げていると指摘されています。

 

これらの問題は新型コロナウイルスの流行によって悪化したものの、フィリピンの物流業界ではコロナ以前から指摘され続けていた課題でもあります。YCP Solidianceとフィリピン・サプライチェーンマネジメント協会(SCMAP)が共同で発表したホワイトペーパー「物流業界におけるデジタル化」では、顧客の透明性、通関手続き、港の混雑等の問題を解消するためには、物流業界でデジタル分野の進歩を加速させる必要があるとしています。

 

物流業界のボトルネック

フィリピンの物流業界は、昔から変わらない方法で運営されています。サプライチェーンのプロセスは、注文管理やカスタマーサービスといった顧客対応も含め、そのほとんどを手作業に頼っています。注文状況の透明性を求める消費者が増えていますが、発送の管理は紙の運送状や領収書に依存しているため、対応が困難になっています。加えて、新型コロナウイルスの流行によって、各社は少数の当番社員に頼らざるを得なくなり、作業がさらに遅れています。

 

また、輸入品はフィリピンに持ち込まれる際に、関税局 (BOC)の審査を受ける必要がありますが、審査の段階ごとに書類が必要となり、様々な関係者との調整が必要となります。残念ながら、こうした書類の大半はいまだに手作業で発行されており、最初のステップの一つである貨物の電子受領証だけがようやくデジタル対応に移行された状況です。さらに、貨物の種類によっては、他の官公庁からも許可を得る必要が生じる場合があります。こうした長いプロセスは、完了するまでに数週間を要することも多く、物流業界にとって最大のボトルネックの一つである港の混雑に繋がっています。

 

デジタル化への道筋

デジタルトランスフォーメーションは「言うは易し、行うは難し」ですが、企業がボトルネックや問題に対処するための技術的ソリューションの導入方法を学び、ステップアップするためには様々な道筋があります。

特に電子商取引の分野でデジタル化を導入した物流企業は、カスタマーサービスや通関手続き上の問題を解決し、大きな成果を上げています。

·       透明性: 輸送用に設計された顧客重視の技術的ソリューションを採用することで、透明性を向上させることができます。すでにNinja Van等の物流企業は、QRコードを利用してリアルタイムで注文を追跡できるようにすることで、顧客により高い透明性を示しています。

·       通関手続き:デジタル化によって、通関の手続きと許可にかかる日数を、1025営業日から35営業日に短縮することができます。これは、暗号化されたオンラインフォームや、署名等の機密情報に対する独自のデジタル認証方法を使用することで可能になります。

 

デジタル化は、物流業界が様々な分野で直面してきた長年の問題を解決する機会を豊富にもたらします。パンデミックの影響に対応するために国が「ニューノーマル」に移行するにあたって、効率性と有効性を確保するためには、デジタル化が重要になります。

 

フィリピンの物流業界における様々なステークホルダーとそのデジタルトランスフォーメーションの計画については、こちらからホワイトペーパーをご覧ください。

 

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