化学産業における環境対応と 企業課題

製造業として素材を提供するだけにとどまらず、社会需要やテクノロジーの進化に合わせて生産改善を繰り返し、多様な領域へ染み出すことで化学産業はその業容を拡大してきました。

2022 年 04 月 , by 片岡 信矢
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日本の産業において幅広い業界と繋がっている化学産業は、言わずもがな重要な基幹産業の一つであり、また昨今高い関心を集めているSDGs観点による環境配慮において、大きな影響のある産業となっています。そのため、化学産業に属する各社が真摯に環境配慮やそれら規制への対応に取り組んでいます。しかしながら、環境配慮へのトレンドが強まり、環境規制が厳しくなる一方で、各企業がそれらに対して課題や問題意識を抱えていることも事実です。本レポートでは、広義での化学産業メーカーにおける環境対応に対する課題や問題意識を整理しつつ、今後の対応を考えていきます。

製造業として素材を提供するだけにとどまらず、社会需要やテクノロジーの進化に合わせて生産改善を繰り返し、多様な領域へ染み出すことで化学産業はその業容を拡大してきました。それだけに、我々が手にする多くの製品には何かしらの化学原料から作られた素材が含まれています。そのため、昨今のSDGsへの関心の高まり、環境配慮型社会の実現を考えた場合、その汎用性の高さにより非常に大きな役割を担っていると言えます。二酸化炭素排出に関する問題だけでなく、マイクロプラスチック問題に代表される環境や生物、人体へ影響のある原材料や素材に対する規制も厳しくなっており、今後もこの方向性は続いていくものと考えられます。また、国内外の環境規制は海外ビジネスを主戦場とする大企業から国内ビジネス主体の中小企業まで、幅広く影響を及ぼしています。そのため、大企業を中心に手掛けるビジネス領域(川上~川下)や製品幅が広い企業は、環境対応をポジティブに捉える傾向があり付加価値への積極的な転換に取り組んでいます。一方で、企業規模が小さくビジネス領域や製品幅が狭い企業についてはマイナス影響の傾向が強いことが現状です。情報収集や既存製品やビジネスに関しては一定の取り組みがされているものの、投資や事業戦略レベルにおける対応については、これからの企業が多くなっています。

化学業界では、加速する環境配慮や厳しくなる規制の変化をビジネスチャンスと捉えて、付加価値への転換を図ろうとしています。そのためには、各企業において中長期を見据えた大きな戦略、サプライチェーン全体での取り組み、産業や国といった枠組みにおける取り組みが今後は更に必要になってきます。そうした取り組みを実現するためにも、各社がそれぞれの思惑で動くのではなく、規格統一や素材情報の共有、団体や国単位で動いていくことも重要になってくると考えられます。

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